匍匐前進日記

行政職で森林・林業にかかわってましたが、現在は民間で働き出しました。記事のテーマは業務関連の資格と時々パソコンの話ってところです。So-netから移行してきました(20160620)。移行前のは20100107~。記事は時々加筆修正します。

熱海の盛土被害に思う

1年前の熱海での土石流被害をきっかけに5月に成立した盛土規制法( 宅地造成等規制法の一部を改正する法律)。 

www1.mlit.go.jp

なんか最初から「盛土」という用語の使い方自体に忖度感を感じています。問題は「残土処分」であって、本当に土地利用を目的とした盛土は排水施設や敷均し・締固めをきちんと品質管理しないといけないので、少なくとも熱海のように土石流の発生源になるようなことはないと思います。
だから本当は「残土処分規制法」にするべきだったと思います。
それが結局宅地造成法の改正で対応してます。
残土処分行為をすべて規制するのではなく、自治体に規制対象の区域を指定させ、指定区域内でのみ、残土処分を規制するよう制度です。指定区域外の行為は以前と同じです。
宅地造成法の枠組みでやればそうなるんでしょうけど、
そもそも宅地造成法は宅地として土地利用をする場合の法律なんで、目的が残土処分で、あとの土地利用なんか考えてない低コストでテキトーな土捨て場を規制するのはちょっとムリが多いと思う。

昨日のNHKの時事公論で観た範囲では、やっぱりザル法で残土処分地を規制する側の自治体の負担にほぼ丸投げな感じ。発注側がコストをほとんど負わないような。
残土を発生させる側に思い切り忖度した制度という印象。
自治体サイドでも残土発生元の建設部局と規制部局は組織的にも交流がないことが多いので内部でも「あいつら~」的な軋轢が生まれることもあります。

国土交通省のお知らせサイトでは、「責任の所在が明確化」とありますが、土地所有者と原因者(=行為者)に限定されています。
違法な残土処分を止めるのに一番効果があるのは、発生元がその残土処分地に残土を運び込まないことなんですが、発生元に責任が及ばない法制度では、そのうち規制サイドの自治体職員が違法業者に殴られたり、ダンプにひかれて死んだり、なんてことが起こりそうな気がする。
せめて違法処分地への持ち込み車両の追跡調査で分かった発生元の元請業者、発注者の公表と処分くらいはできるような枠組みにしとかないと、発生元に緊張感や責任感が生まれないし、ダメでしょう。

きちんとした防災上の措置が取られた残土処分地はそれなりのコストがかかるはずで、
そのコストは発生元がきちんと負担するべきですし、
最終的には発生元の工事がマンションの場合はマンション購入者、公共工事の場合は納税者がコストを負担することになっても、理不尽で亡くなるかたや悲しい思いをする人がなくやるように世の中を良くしていくのが今を生きる人間として大事なことだと思います。

自分が住むマンションの建設で発生した残土が、どこかの処分地の下流に住む人を苦しめることになるのはなんか違う。自分に直接責任がないことには平気な人もいるんでしょうけど。
今まではその因果関係すらわからない状態でしたし、盛土規制法では発生元と処分地の因果関係に必ずしも責任が発生しない制度になりかねない状態です。
来年の施行までに施行規則、実施要領等が煮詰まっていけば、もう少しちゃんとするのかもしれませんけど。